さて、経歴に関してはプロフィールをご覧いただければと思いますが、せっかくなのでもう少し突っ込んだことについてお話しします。
今は演奏家として舞台に立つこと、そして教育者として後進の指導にあたることが日常となっていますが、このような仕事に携われているのは、幼少の頃より日常的に音楽が身近にある環境だったこと、素晴らしい先生方やクラスメイトに恵まれたことが本当に大きかったと思います。
習い事に行く車の中で音楽を流してくれたり、父がかけていたジャズのレコードが耳に入ってきたりしていたもので、自分もまじめに長時間練習をするというよりは、ピアノを好きな時に弾いたり聴いたりしていました(もちろん真面目な練習もしましたよ)。
父のお気に入りだった三舩優子さんのCD≪ラプソディー・イン・ブルー(とくにキャンディード序曲)≫や、故・宮沢明子さんのシューベルトのOp.120のソナタは、今でも印象深く残っています。ここで挙げだしたらキリがないので、お気に入りのCDや演奏家なども後日紹介していきますね。
音楽に限らず、私を人間的に成長させてくれたのも、素晴らしい先生方と彼らの金言でした。子供の自分には「?」と思うようなことでも、のちになって「あのときの発言はこういう意図だったんだ」と納得することばかりです。そしてその軸の上に、自分が成り立っているのだと、レッスンしていてつくづく思います。
音楽は、感性を育みます。曲を完成させ人前で弾く一連の作業には多角的な問題点が伴いますから、それらを解決し音楽的に自立するというプロセスは、人間的な自立を促すことにつながります。いつしか先生の元を離れ、しっかり自分の足で歩かなければいけません。
楽譜という‘規律’をしっかり守り、そこに個性を融合させ、自由にはばたく。その観点を、私が師事した先生方はとりわけ強調されていたように思います。
ピアノをやめたいと思うことは何度もありましたが、挫折を味わいつつも今まで続けてきたことで、揺るぎのない「私の音楽」が確立されたと自負しています。そして、こうして先生方から受け継いできたメソッドや音楽観を次世代の子供たちに伝えてくことに、今では大きな喜びを感じています。
長期的な目線で皆様のお役に立てることを願いつつ、今後の更新も楽しみにお待ちいただければ幸いです。
2024.4.28(Sun.)